TRUNK SHOW #03

Öffen meets BUNZABURO
「sea seam」

とびきり可愛らしい靴が誕生しました。お洒落とエシカルを両立するシューズブランド「Öffen(オッフェン)」と、京都の伝統技法「絞り」をアップデートするブランド「BUNZABURO」。二つのブランドがPASS THE BATONを通じて出会いました。
Öffenの定番ボディにBUNZABUROの端材を使ったアクセサリーパーツ、通称「ツンツン」をのっけて。PASS THE BATONのオリジナルシューズ「sea seam」デビューです。

生まれも育ちも全く違うのに、どこか通じ合うものを感じる二つのブランド。Öffenのサステナブルな製造方法やBUNZABUROの端材事情などなど、二つのブランドにお邪魔してお聞きしました。

BACKBONE

才色兼備という言葉は
Öffenのためにあるのかも

東京・代官山の鎗ヶ崎交差点のほど近くにあるÖffenのショップ。店舗の什器もアンティークやサステナブルな素材が使われている

Öffenと書いてオッフェンと読みます。ドイツ語でオープンという意味だそうです。私がÖffenのシューズに出会ったのはPASS THE BATONが開催するマーケットイベント「PASS THE BATON MARKET」の会場でのこと。鮮やかな色と柄がひときわ目立っていて、思わず近づいて靴を手にとったことを覚えています。
カジュアルにもキレイめにも合わせられるデザインで、おまけにカラーバリエーションも豊富、これはどんなシーンでもお洒落に履けると確信しました。

だけど、Öffenの靴はただお洒落なだけではありません。その作り方にも注目して欲しいんです。まずはこのブランドがどうやって生まれたのか、デザイナーでありディレクターの日坂さとみさんにお話をお聞きしました。

Öffenのデザイナー・ディレクターの日坂さとみさん。Öffenの靴のデザインも手掛けている

「ブランドができて4年目になります。私はアパレルの業界に長く携わってきましたが、製造現場ではとにかく端材がたくさん生まれてしまうんです。洋服を作るためにこれだけの廃棄物が出るということがずっと気になっていて、いつか“やり方”から見直さないといけないと思っていました」(日坂さん)

日坂さんは、ファッション業界の押しては引いてを繰り返すトレンドや製造過程における環境負荷の現状を見て、もう一度、スローな視点でものづくりができないかと考えたのだそうです。そこで「何を作るか」ではなく、「余分なものを減らしてどう作るか」をコンセプトに靴を作り始めます。

ものづくりの“やり方”を見直して、ペットボトルをリサイクルした糸を使う、靴を構成するパーツを大幅に減らす、など製造過程で発生する端材を極限まで減らすことを目指して生まれたのがÖffenというブランドです。端材の量は靴1足あたりなんと50g! 通常の約4分の1。この製造方法を開発するために2年かかったそうです。ものづくりに対する姿勢が素敵ですよね……

写真左は1足分のÖffenの靴のすべてのパーツ。写真右はÖffenの靴の製造過程で出る端材

「サステナブルに配慮したというのがコンセプトの一つではありますが、それが押し付けになるのは本末転倒です。あくまでお客様にはこれまで通り、ファッションを楽しんでいただきたい。その結果として私たちのものづくりを知っていただいて、ああファッションの世界もこうなっているんだ、と思ってもらえればいいなと思っています」(日坂さん)

デザインにもこだわるけれど、作り方にもこだわる。日坂さんのお話を聞いていると才色兼備という言葉がぴったりのブランドだなと感じました。

しぼりしぼって100余年
BUNZABURO

京都・烏丸の町屋に並ぶBUNZABUROのショップ。のれんのツンツンが風にはためいて美しい。もちろん触っても痛くない

さてさて、一方のBUNZABUROは、1915年に京都烏丸で「絞り」専門の呉服製造業として創業した片山文三郎商店のブランド。「絞り」とは生地を染料に浸して染める伝統技法です。

「絞りは布を糸で括って染料が染み込まないようにして、まだらな模様を作る技法です。通常、染めた後に凹凸を少し残しながら生地を伸ばすのですが、これを伸ばさないでそのままの状態の生地にしているのが、BUNZABUROの特徴です」

そう話してくれたのは片山文三郎商店4代目の片山一也さん。

片山文三郎商店4代目の片山一也さん。黒縁眼鏡が似合う

ショップ内にはいろとりどりのツンツンが並ぶ

絞り染めした後の布。布をくくる糸を解くと、まだら模様が現れる

生地のツンツンがなんともユニークで、ああ、かわいい……。それに加えて素材にはシルクのほかに耐久性に優れたポリエステルを採用していて、蛍光色やメタルカラーといったポップなカラー展開も魅力だと思います。

そんなBUNZABUROさん、「PASS THE BATON MARKET」に出展されていたのですが、その際に「お店の2階には端材がたくさんある」というお話を伺いました。

「例えば、バッグを作る時にはざっと10mぐらいの生地を絞ります。そこからパーツにカットして組み合わせて成形するんですが、カットする時に必ず端の方が余るんです。そういった端材を工場から送ってもらってお店の2階で保管しています」(片山さん)

お店の二階に上がるとそこにはたくさんの段ボールが。きれいに染まった端切れを見ると、もったいなく感じてしまう

実際にお店にお邪魔すると、いくつもの段ボール箱が積み重なり、その中にはたくさんの端切れがストックされていました。でも一体何に使うのでしょう?

「昔はお客様向けのサービスとして祇園祭で、端切れセットとして安価に販売してたんですけど、最近では転売などのリスクも出てきてやめちゃったんです。
かといってこれを製品として展開するのも難しいんです。小さなパーツを作ったとしても安定供給できないですし、主力商品にはなりませんから」

端材を使って商品を開発するのって思ったよりも難しいんだそうです。考えてみればそうですよね、通常は最終製品の形を決定してから素材を用意するものだと思いますが、既にある素材から最終製品を考えるのとでは、発想が全く違いますもんね。

「できるだけ端材を出さないように配慮していますが、モノをつくると端材はどうしてもできるんです。端材をゼロにするには商売を止めるしかない。でも、それもできないですし。
せめて、端材を何かに活かせないか? そう思って保管しています。部屋が埋まっちゃって邪魔ですけどね(笑)」

RELIGHT

ツンツン、トゲトゲ
海が見えてくる

ふたつのブランドが出会ってできたPASS THE BATONのオリジナルシューズ「sea seam」。
ボディはÖffenがブランドを始めて、一番最初に作った定番のモデルで、今も販売されているロングセラー。品番は0001番です。「万能選手」でシーンを選ばず、お仕事でも休日でも履いて行けるのがいいところ。

上に載るBUNZABROのツンツンのバリエーションは4つ。海洋生物をイメージして、ネオンカラーを始め鮮やかな色を選びました。ウニのような、イソギンチャクのような、見ているとなんだか海が思い浮かんできます。このシューズを履いて海に行きたいな。

定番モデル0001は日坂さんも愛用しているとか

端切れを仕立ててツンツンのパーツにしたもの

ベーシックなシューズにツンツンのスパイスを加えると、デニムに白Tが似合う白髪のマダムも、パリジェンヌにあこがれるフレンチシックな女の子も、バリバリモードなファッショニスタも、自分のスタイルをもつ様々な人にフィットするデザインになりました。

二つのブランドが出会ったのはPASS THE BATONがきっかけ。サステナブルなものづくりブランドと伝統をアップデートするブランド、二つの異なる文脈を繋ぎ合わせられたとしたら、とても嬉しいな。このコラボレーションが未来へとつながりますように。

writing / ito
photo / oana

LINE UP

photo / oana
text / ito

BUY IT HERE

PASS THE BATON MARKET
vol.17で見つけてください

2024.12.14 ~ 15

PASS THE BATON MARKETは企業やブランドの倉庫に眠っていた規格外品やデッドストックアイテム、知られざる職人の技や伝統工芸などの文化に光を当てる一風変わった蚤の市です。Öffen meets BUNZABURO 〜sea seam〜 は PASS THE BATON MARKET vol.17、2024.12.14〜15 @ KOKUYO SHINAGAWA THE CAMPUSで限定販売致します。是非会場でご覧ください。

RELATED CONTENTS

SEA SEAM SHOW

24.12.12